デュピクセント

デュピクセント

生物学的製剤※1と言われる分類に区分される治療薬の一つです※2。
バイオテクノロジー(遺伝子組み換えや細胞培養)の研究・技術によって開発された医薬品で、アトピー性皮膚炎に対しては2018年4月から国内での使用が開始されました※3。
これまでのアトピー性皮膚炎治療薬に比して薬剤費が高価ですが有効性にかなりの期待ができる薬剤で、掻痒や見た目の皮膚所見の改善に優れております。ステロイドの外用や抗ヒスタミン薬の内服で十分な症状緩和が認められない場合は、経済的に使用可能であれば※4できるだけ早急に導入してアトピー性皮膚炎の治療目標である寛解(通院・投薬していてかゆみ・皮膚症状が落ち着いている状況)状態に持ち込むことが望ましいと考えられます。

  • ※1 生物学的製剤とは・・・生物から作られた物質を応用して作られた薬です。関節リウマチの分野での使用が最も歴史があり2003年から国内使用が開始されております。
  • ※2 2021年3月現在、アトピー性皮膚炎で使える生物学的製剤はデュピクセントのみとなります。
  • ※3 海外ではアメリカで2017年から投与が開始されております。
  • ※4 デュピクセントは高額な薬剤です。詳細は下の「費用に関して」の項目を御覧ください。

この様な方におすすめです。

ステロイド外用薬などの抗炎症外用薬を一定期間投与しても十分な効果が得られない

  • ※十分な効果が得られない人とは「痒みがあることで睡眠障害や集中力低下、外見上のストレスなどを認める方」のこと

機序

アトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因になっている体内物質の働きを阻害することで効果を発揮いたします。

副作用

  • 結膜炎:目やまぶたの赤みやかゆみが認められる場合がありますが、殆どの場合は点眼薬や弱いステロイドの軟膏で改善いたします。
  • ふらつき、めまい、吐き気、ドキドキ感など。ただしこれらの頻度はかなり低いと報告されています。
  • ※いずれの副作用も使用後すぐに出現するとは限りません。
  • ※デュピクセントは生物学的製剤にも関わらず肺炎を始めとした感染症のリスクをほぼ考えなくて良い薬剤です。この点は素晴らしいと思います。

使用にあたって

デュピクセントは微細な針を用いた注射薬です※。2週間に1回の注射が必要です(つまり2週間毎の通院が必要です)。
初めはスタッフが院内で注射を行いますが、2回以上の自己注射指導を受けていただいた方は御自身での投与も可能です。自己注射が可能になった方は最長3ヶ月に一度の通院となります。
※ 糖尿病の方がインスリン注射を行うような要領です。

実際の治療スケジュール

  • 初診時:診察にて皮疹の程度をスコア化し適応を判断いたします。
    デュピクセントの適応となりましたら国保の方は市町村、社保の方は各保険者にお問い合わせ下さい。詳しくは下の「費用に関して」の項目を御覧ください。
  • 投与開始日:この日のみ1回2本を注射いたします。
  • 2週間後:1回1本の注射となります。
  • 2週間後以降:1回1本の注射を2週間おきに行っていきます(自己注射が可能になった方は最長3ヶ月に一度の通院となります)。
    • ※帰宅時に次回外来の予約をおとりいたします。
    • ※患者さんの状況に合わせ適宜自己皮下注射の指導を行っていきます。

注意点

  • デュピクセントを投与開始後も原則として外用薬は継続していただきます。ただし症状の改善に併せ、外用薬の量やランクも適宜考慮いたします。
  • デュピクセントは脱ステロイドの為の薬剤ではありません。
  • 喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹などのアレルギー性疾患をお持ちの方は各分野の主治医にデュピクセント(生物学的製剤)を使用していることをお伝え下さい。
  • デュピクセントは高額な薬剤となります。詳細は以下の「費用に関して」の項目をお読み下さい。

費用に関して

小児の場合、東京23区在住の方は医療証を提示することで18歳まで無償で治療を受けていただけます。
以下は成人に関しての内容を記載いたします。
院内投与、自己注射 いずれの場合でも付加給付制度※をご利用出来る場合があります。事前に健康保険組合に確認をお願いします。
※付加給付制度とは社保・特に大企業、また公務員など共済組合の方は、健康保険組合より月の限度額が2万円、2万5千円に設定されているケースのことを言います。

自己注射の場合

ご自宅で、自身で注射を行うケースです。この場合最大6本(およそ3ヶ月分)まで処方できます。
調剤薬局に処方箋を提出し薬剤を受け取っていただきます。

デュピクセントの薬剤費の目安
自費 (10割負担)の場合
ペン1本 61,714円
シリンジ1本 61,523円

デュピクセントは保険適応しています。

自己負担額
(窓口で支払う金額)
ペンの場合 シリンジの場合
初回
(2本)
2回目以降
(1本)
初回
(2本)
2回目以降
(1本)
10割負担の場合 123,428円 61,714円 123,046円 61,523円
3割負担の場合 37,028円 18,514円 36,914円 18,457円
2割負担の場合 24,686円 12,343円 24,609円 12,305円
1割負担の場合 12,343円 6,171円 12,305円 6,152円

自己注射に移行した場合、クリニックでのお支払いに薬剤費はかからないため、約5,000円ほどになります。お薬代は薬局でのお支払いになります。

患者さんへのメッセージ

デュピクセントはアトピー性皮膚炎の患者さんの生活の質を上げ、しかも生物学的製剤にも関わらず肺炎を始めとした感染症のリスクをほぼ考えなくて良い素晴らしい薬剤だと思います。「勉強や運動など、やりたいことを普通に出来るようになって欲しい」「よく眠れるようになって欲しい」「ステロイド外用薬を塗っても症状が改善しない方に次の一歩となる治療を提供したい」の思いで当院では生物学的製剤 デュピクセント を導入いたしました。一方で他の種類の生物学的製剤と同様に、一般的な薬剤に比べて価格が高額な点が懸念されます。この点に関して、私どもは本製剤は十分な費用対効果を望むことの出来る治療方法であると考えております。
「一度話だけでも聞いてみたい」「使うか迷っている」など、お悩みや質問にはいつでも対応いたしますので御相談をいただければと思います。

良くある質問

Q 注射後入浴などは可能ですか?
微細な針を使った注射ですので可能です。
Q 何回くらい治療すれば効果が実感できますか?
初回注射後約2週間程度で効果が認められることが多いようです。
Q いつまで治療を続けたら良いですか?
アトピー性皮膚炎に対する初の生物学的製剤なため根拠となるデータはございません。当院としては治療目標である寛解(通院・投薬していてかゆみ・皮膚症状が落ち着いている状況)状態に至った際にはTARC値なども考慮しつつ総合的に判断し一度中止してみても良いと考えております。
ただし異なる疾患となりますが関節リウマチで生物学的製剤を使用した経験ですと中止すると症状が再燃するイメージがあります。また2ヶ月経過しても改善が認められない場合は中止をお薦めします。
Q どれくらいの人がデュピクセントを使っていますか?
2021年3月現在、日本では二万人の方がお使いの様です(一部喘息の患者さんも含まれます)。
Q デュピクセントのアメリカでの位置づけについて
AAD(アメリカ皮膚科学会)のアトピー性皮膚炎の最新ガイドラインは 2014 年で、それ以降の改訂版は発刊されておりません。そのためデュピルマブの記載は確認ができませんでした。ただ、中等症から重症例で、既存の外用ステロイドで効果不十分な場合の選択肢としてデュピルマブが推奨されておりました。
Q コロナウィルスのワクチン接種との関係性は?
日本皮膚科学会より「現在デュピクセントを用いた治療中であってもワクチン接種に際して治療中断する必要はない」旨の通達が出ております。
Q クレジットカード支払いは出来ますか?
申し訳ありません。本製剤を用いた治療のお支払いにクレジットカードは使用できません。
診療時間 日/祝
9:30~12:30(受付9:15~)
15:00~18:20(受付14:45~)
  • 土曜は10:00~14:50(受付9:45~)
  • 皮膚科月・火・水・木・金・土 
    ペインクリニック月・火・金・土

いしいクリニック築地

ご予約・お問合せ TEL:03-3541-2141

  • ※手術と美容皮膚科、ペインクリニック領域に関する御相談は予約が可能です。
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