<目次>
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)について
アレルギーの原因物質(アレルゲン・抗原)が体内に入り鼻腔や粘膜に付着すると免疫細胞が活性化し、IgE抗体が産生されます。このIgE抗体がマスト細胞と結合しマスト細胞が活性化することでヒスタミン・ロイコトリエン・サイトカインなどの化学物質が放出され鼻水や鼻詰まり、目の痒みが引き起こされるのです。
スギ花粉は2−4月、ヒノキの花粉は3−5月が最盛期です。スギとヒノキには共通抗原があり、スギ花粉症で困っている方の約60%はヒノキ花粉にも監査されていると言われております。
花粉症の基本的な治療は肥満細胞から産生されるヒスタミンを抑制するために、抗ヒスタミン薬を内服することです
しかし、人により産生されるヒスタミンの量が異なり、抗ヒスタミン薬だけでは症状が良くならない方もいらっしゃいます。
※当院では39項目のアレルギー検査(保険診療)で行うこともできますのでお気軽にお問い合わせください。
ゾレア
ゾレア(一般名:オマリズマブ)は抗IgE抗体と呼ばれるもので、マスト細胞と結合するため、アレルゲンが体内に入り産生されたIgEがマスト細胞と結合することができなくする薬です。ゾレアを投与するとIgEはマスト細胞と結合できないため活性化することができないためヒスタミンなどの化学物質が放出されず花粉症の症状を改善してくれる治療方法となります。
ゾレアによる治療適応
- 12歳以上で体重が20-150kgの範囲のかた
- スギ花粉のアレルギー検査で血清特異的IgE抗体がクラス3以上
- 血清中総IgE濃度が30-1500IU/mlの範囲にある方
- 重症または最重症の季節性アレルギー鼻炎(花粉症)で昨年も重篤な症状があった方
※重症とはくしゃみや鼻をかむ回数が1日11回以上、または鼻詰まりがひどくて1日中またはかなりの時間口呼吸している
※治療期間は2月から5月の花粉の飛散時期のみです
投与量・費用
投与量・投与期間は血清中の総IgE濃度と体重によって決まります。
決められた量のゾレアを4週間または2週間ごとに皮下注射します。
1回あたりの投与量によって薬剤費は異なり、健康保険3割負担の方の薬剤費は8,744円〜69,953円(再診療含まず)で、症状をみながら投与していくことになります。
治療中の注意点・副作用
- これまで行ってきた花粉症治療がわかるようにお薬手帳を持参ください
- 治療開始まで数回受診することになりますので(適応の有無、血液検査、投与量の確認)ご了承ください
- 主な副作用は注射部のかゆみ・腫れ・赤みが多く、眠気や眩暈を感じる方もいますので注射直後の車の運転や機械の操作は控えるようにしてください
- 以下の症状が出た場合はアナフィラキシーが疑われますので、すぐにお知らせください
全身の痒み、蕁麻疹、唇・舌・喉の腫れ、痙攣、呼吸困難、血圧低下、失神、立ちくらみ
ボトックス点鼻療法
ボトックスは神経伝達物質(アセチルコリン)の放出をブロックする働きがあります。アレルギー性鼻炎の場合は、鼻粘膜の神経の働きを抑制し、鼻水などの分泌を止め症状を軽減させる治療法です。
効果は点鼻後、数時間で現れ、眠気やだるさ、口渇感などの副作用はなく日常生活に支障をきたすことはありません。
また内服薬と併用も可能であり、花粉症の症状が出てから治療を開始しても効果があります。
どんな治療をしても効果が薄い方、いまの状態を迅速に改善したい方オススメの治療法です。
効果
1回の点鼻で約2−4週間効果が持続します。
治療回数を重ねても効果が低下することはありません。
効果は個人差がありますが点鼻後、数時間で鼻汁が減り目のかゆみが軽減したと感じる方が多いです。
治療の流れ
- 1. 横になりシリンジで鼻腔内にボトックスを点鼻します
- 2. 注入後は2~3分鼻をマッサージしてください
- 3. 注入後2~3時間は鼻をかまないように気をつけてください
鼻腔ボトックス治療を実施できない方
- 以前にボトックスで治療して異常反応があった方
- 妊婦、授乳中の女性
- 脊髄、末梢神経の病気に罹患している場合
費用(保険外治療となります)
両鼻腔 1回 ¥5,500(税込)
当院初診の方は初診料2,200円(税込)、再診の方は再診料1,100円(税込)がかかりますのでご了承ください。
よくある質問
内服薬(抗ヒスタミン薬)と併用しても大丈夫ですか
問題ありません
鼻腔内に注入する際、痛みはありますか
シリンジで直接鼻腔内に入れるため、異物感はありますが痛みはありません。
ダウンタイムはありますか
特にありません
施術後何か気をつけることはありますか
特になく、当日から飲酒や入浴などの制限はございません
非特異的減感作療法:ヒスタグロビン注射
花粉症やアレルギー症状に対する治療法の一つで、特定のアレルギー物質に対しての感受性を低下させる特異的減感作療法とは異なりスギ花粉やダニ、ハウスダストなどといったアレルギー物質全般に対して体質から改善する治療になります。
花粉症の症状である、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・眼の痒みは花粉といったアレルギー物質が体内に入ることでヒスタミンという物質が放出され生じます。ヒスタグロビン注射をするとヒスタミンに対する抗体ができこのような症状を緩和してくれるのです。
ヒスタグロビンは国内の献血血液から造られています。そのため感染症の危険がありますが(最高水準の安全対策がおこなわれています)、昭和42年に国内で発売されて以来一度も感染症を引き起こしたことはない安全性の高いお薬です。
注射前に薬や治療の説明を受けていただき納得をいただいた上で治療をおこなわせていただいております。
※こちらの治療は保険適応になります。3割負担の場合、初診から1クール6回で約 ¥4,400
治療の流れ
- 1. 成人は1週間に2回、合計6回を1クールとしたヒスタグロビンの注射をおこないます。
- 2. 小児は1週間に1回、合計6回を1クールです。
- 3. 最初の1クールで効果が不十分な方は更にもう1クール注射をおこないます。
※効果には個人差があるためすべての方に同じ効果があるというわけではありません。
副作用
眠気、眩暈、頭痛、吐き気といった副作用が稀に起こることがございます。
ヒスタグロビン注射を実施できない方
- 激しい喘息発作のある方
- 妊娠または妊娠の可能性のある方
- 生理直前、生理中の方
- 著しく衰弱している方
- ヒスタグロビン注射でアナフィラキシーショックをおこしたことのある方
注意
- 生ワクチン(麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘)の抗体獲得にたいして影響を与える可能性があるため接種から2週間以上あけてヒスタグロビン注射をおこなう必要があります
- ヒスタグロビン注射をおこなってから生ワクチンを接種する場合は最低3-4ヶ月あける必要があります
- ヒスタグロビン製剤はヒト組織や血液を原料とした生物製剤のため注射した方は献血を控えてください
こんな方におすすめです
- すでに花粉症の症状がある方
- 内服や点眼・点鼻薬でも症状が抑えられない方
ノイロトロピン注射
ノイロトロピンはワクシニアウイルスという安全なウイルスをウサギの皮膚に注射して炎症を生じさせた組織から抽出した非蛋白の活性成分を有する注射です。
こちらは疼痛を軽減する作用もあり慢性に経過する腰痛、肩や首のこり、痛みにも使用されます。
ノイロトロピンはヒスタミンを放出する肥満細胞や抗体がくっつく受容体を占拠することにより花粉やハウスダストなどの抗原が受容体に結合しにくくなり症状が緩和されるといわれています。
主に花粉症による鼻水、くしゃみ、眼の周りの痒みなど幅広い効果が認められています。
効果は個人差が大きく当院ではヒスタグロビン注射との併用をおすすめしております。
※こちらの注射は保険適応となります
副作用
発疹、眠気、ほてりといった症状が稀に発生することがあります